アメリカ・カリフォルニアへ10日間出張してきました。

お酒の市場調査、物流調査が主な目的でしたが、思いがけない良い出会いや将来楽しみな話も出てきて、とても有意義なものになりました。この旅を通じて得た知識や感じたことを記したいと思います。

1.カリフォルニアにおける日本酒の流通

2016年の農林水産省の調査(下記グラフ参照)によると、日本酒のアメリカにおける小売価格は、日本国内の約2倍とのことでした。日本のフードを扱う現地スーパー3店舗+日本酒専門店をチェックしましたが、実際は日本の小売価格の2~3倍程度のようです。

以下のようにコスト構造を見てみると、その大半が流通に関わるコストです。

流通業者も小売業者も取りすぎじゃない?って思うかもしれません。

しかし現地の専門家にヒアリングした限り、この価格構造はかなり工夫して効率化した結果での数字と考えられます。なぜなら専門家の情報を基に、輸送費用をシミュレートしてみましたが、日本酒を単純に数百本程度輸出しようと思うと、流通コストはこのグラフのコストよりも断然高くなったからです。アメリカは禁酒法の名残からか、国内の酒類流通の規制がとても厳しく(梱包、州をまたぐ流通、年齢チェックなど)、輸送コストが高くなる一因となっています。

一方で、カリフォルニアワインは日本の小売価格よりもかなり安く売られています。$30くらい払うとかなり良いものが飲めます。個人的に、少なくともこの地域でワインを意識したような日本酒は勝ち目がないのでは?と思いました。それなら安くておいしいワインを飲めば良いからです。

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Costcoのワイン売り場。上質かつ安価なワインが大量に販売されている。

日本酒特有である、お米由来の風味をがっつり活かした日本酒の需要は間違いなく一定数存在することを今回の旅で認識できました。そこを狙っていけばワインとの価格競争を避けながら勝負していけるのではないかと思います。

2.カリフォルニア産の日本酒について

上記では、日本から輸入された日本酒について書きましたが、カリフォルニア現地で生産されている日本酒もあります。

小売価格は純米吟醸グレードのワインサイズ(750ml)で$30くらいの価格帯が多かったです。あまり日本から輸入された日本酒と価格が変わらないなと思ったのですが、カリフォルニアの人件費と土地代が日本よりも高いことが価格を押し上げている一因のようです。

また、特筆すべきは生酒が現地販売されていること。日本から輸入された生酒はカリフォルニアでは確認できず、やはり熱に弱いので物流的に難しいところがあるのだと思います。その点、現地生産であれば熱に晒される時間を大幅短縮できるので生酒を提供することが可能です。

セコイヤ・サケのプロダクト。左2つがそれぞれ生酒、生原酒。

また、セコイヤ・サケ(Sequoia Sake)の紀子さんに、酒蔵案内やカリフォルニアの酒事情について教えていただきました。

セコイヤ・サケは紀子さんと旦那様で創業された酒蔵で、日本酒への愛ゆえに独自で醸造を研究(すごい!)して開業された、サンフランシスコ初の酒蔵です。日本の一般的な酒蔵と比較すると小規模であるものの、精米機、タンク、麹室など設備はかなり洗練されたものが揃っていました。センサーとスマホで温度を徹底的にモニタリングされているのが印象的で、日本の蔵でもここまで効率化を図っているところは少ないのではないでしょうか。

とても丁寧に教えて下さった紀子さん

肝心の日本酒もとてもおいしかったです。紀子さんには怒られるかもしれませんが、正直テイスティングする前は、日本国内の日本酒には勝てないでしょと思っていましたが、全然日本でも勝負できるレベルだと思います。僕は特に生原酒のプロダクトが好みで、テイスティングだったのに飲み干してしまいました。

紀子さんによると、セコイヤ・サケが創立された2015年には、カリフォルニアには10蔵ほどしかなかったが、近年増えてきて現在30-40の酒蔵が存在しているようです。また、感覚的にはあと2年で100蔵に到達してもおかしくないくらいのスピード感で、アメリカン・クラフト・サケの市場が着実に立ち上がってきているようです。

3.日本酒イベント

DeployGate様が主催するパーティで、僕が日本から持ち込んだ日本酒を提供させていただきました。持ち込んだ日本酒は以下の通りで、どれも日本酒特有の香味を十分に味わっていただけるものを、淡麗なものから濃醇のものまで幅広く用意しました。

日本から持ち込んだ日本酒たち。すぐに空瓶に。

テイスティングメモや酒蔵のプロフィールなどを作成し、それぞれ日本酒の特性だけでなく醸している酒蔵さんの特色なども盛り込んで、日本酒をより楽しめるよう試みました。これは結構うまくいったようです。反省点はテイスティングのコメントを英語で口頭でスムースに伝えられなかったことで、ここは次回までに改善します。

配布したテイスティングノート

日本酒の評価はとても良かったです。不老泉などガッツリ旨口系のお酒は口に合うかな?と不安でしたが、それも杞憂でした。日本酒の大きな可能性を感じた瞬間でした。今回は冷酒のみでの提供だったので、次回は温度帯を変えてぬる燗や熱燗なども試せればと思っています。

4.最後に

今回の旅では、日本酒の造り手、販売者、愛好家(呑み手)の方々とお会いさせていただきましたが、アメリカで日本酒好きな人がこんなにたくさんいるとは想像していませんでした。(自らそのような方々に会いに行ったので、バイアスがかかっていることは認めた上で。)

正直、アメリカに行ったらアルコール規制の壁を事前調査していた以上に痛感して帰るだけなんじゃないかと心配していたのですが、ワクワクする話もたくさん聞けて行って本当によかったです。といっても依然としてそのハードルは高いですが。

何かアメリカの日本酒関係で貢献できたらいいなぁと妄想し、10日間無償で泊めていただいたNobu氏に感謝しつつ、この記事の締めとさせていただきます。